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Pengzi de 雑記帳
中国に関する雑記、備忘や以前すんでいた北京・蘇州の思いでなどなど
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西湖より包頭まで 1 上海へ -04 過去の上海 -02


 かようにこの地方の海港なるものには変還があるが、
それは主として太湖からでる水道の出口にある船着場が淤砂の為に止むなく其機能を発揮し能わぬ所から生ずるもので、
宋時にはかかる水道の江及海に通ずるもの二十四浦と称せられ、
中にも五大浦とて、茜涇、下張、七鴉、白茆、許浦などが重要な港であった。

 この中白茆は宋嘉祐二年范仲淹の開浚があり、
元の季張士誠が兵民十萬を発し、浚治すること長さ九十余里広三十余丈と称せられた所である。
明の『海道経』には、
「劉家港出揚子江南岸候潮長、沿西行半日至白茆港」、
と記し劉家より西へ白茆に至るのは
劉家から山東をへて直沽に達する当時海運の公道であり揚子江に於ける重要な海港の一であった。
故に明の嘉靖年代(一六世紀)には、闊33丈深1丈5尺もあったとの事であるが、
これも康熙時代には巾2丈ないし1丈5尺、深4、5五尺に淤積した。
かかる類例は枚挙に遑がない故に呉卓信の語に、
「自宋至今沿海之河、開濬不知凡幾、未久皆為潮汐壅塞」
とある。

 黄與堅も『江南通史』に、
「太湖諸水、入海要道、其患在潮與汐逆而上、淀積渾沙日以淤塞、幾十年間必其濬之而與大工、役大衆不可以数挙」
と記したのである。
かような次第であるから上海の如く太湖から去る呉淞江、黄埔等の水道によって発達した都邑には、自からこの水道の淤塞という問題と不可離の関係を有すべきである。
しかしかように沖積地の発達ということが速かでなかったならば
上海も今日の所に生じなかったであろう。

 上海の地が海面に顕われたのは極めて新らしいことで、
唐代(九世紀)にはまだ華亭海という海で、
それが十世紀になってようよう民人の居住地となり、
十一世紀には相当な港となり、
十三世紀になって(元代)愈よ上海県となったのであるから、
沖積平原としても7、800年この方の土地である。それは『大明一統志』に
 「上海県在(松江)府城東北九十里、本華亭県地居海之上、旧曰華亭海、宋時商販積聚名上海市、元至元中置上海県」
と明記してあるので明らかである。

 この華亭県というのは今の松江のことで、
唐天保十年(752)に崑山、嘉興、海塩の地を割いて新置した県であって、
その県の東北に当って華亭海と称する。
恐らく大なる入り江のようなところが、漸次埋まって陸地となったのが、
宋代の上海であろう。
この類例は揚子江口の崇明島に見られるので、この島は唐代海中にあり、
宋建炎中(1127)に至り初めて沙上に人の住む所となったのであるが、
爾来益々其面積を増加しつつあるように、上海も其後陸地の増加に伴い、人口愈増加し、
元代の上海県の版画の中に今日では青浦、宝山、南匯、川沙の四県が分離独立するに至ったのである。

 かく年々に造花膨張する陸地を民人が占領する状について日本の『水路誌』に
 「毎年此ノ如クシテ自然ニ埋立テラレタル土地ハ附近ノ支那人之ヲ占有シ直チニ堤防をメグラシテ耕種ス」
とある通りで、
最初は湿潤の地に茭蘆が生じ、泥沙の沈澱を容易にすると、
やがて菱茨の類が蔓衍し、次いで有力者が稲田にするのである。

 かく土地の新成増加を考うると、上海市が宋時今の蘇州河口に出来た時、
黄埔が現状のように南北の主流であったか否やは明かでない。
黄埔の上流嘉興県の辺は、或は伝説の通り楚春申君が鑿ったかもしれぬが、
下流に至って南から北へ一大屈折をするは、
『明史河渠志』にある永楽元年及二年(1403)に夏原吉が蘇淞の水を治め范家浜を濬め、大黄埔に接し海に達せしむとあるに始まる。
即ち現在の黄埔江下流は十五世紀の初めに現れてくるのであるから、
それが十一世紀に同様であったとは考えられぬ、
『上海県志』に
 「宋元間諸蕃入貢皆由青龍鎮、故有舶提挙司之設」
とあるのを見ると、上海よりも寧ろ其上流蘇州河を遡ること水路20カイリの地点にある青龍鎮(旧青浦)のほうが当時重要な海港であったと考えねばならぬ。



~>゜)~<蛇足>~~

目で見たほうがわかりやすいと思ったので、
手持ちの歴史地図集から揚子江デルタの部分を切り抜き、
並べてみましたので、資料: 長江河口の海岸線の変化をご覧ください。
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